育児ノイローゼ

昨日の夕刊でショックな事件が報道されていた。




「川へ投げ込み乳児を死なす米で邦人駐在員の妻(11/4朝日新聞夕刊)」

生後3週間の子供が泣き止まずうつ状態だったという。93年1月から夫が駐在、しばらくして合流、とあるから2年はたっていたろうが、彼女自身は英語が話せなかったらしい。育児ノイローゼの末の発作的行動、母親の資格なし、で片づけるには、あまりにも気の毒な事件だ。

「育児ノイローゼ」と聞くと、育児に疲れて精神的にオカシクなった位にしか思われないだろうが、これには色々な要素がからむ。

1)産後のホルモン

生理学的にも立証されているのだが、産後はホルモンのバランスがくずれて、精神的に平静でいられないこともある。これは「マタニティー・ブルー」と呼ばれるが、本人の意志とは全く関係のない次元の話なので、本人を責めては絶対いけない。

2)産後の肥立ち

私は2回とも産後の肥立ちが良く、出産後2時間で分娩室から無罪放免となったとたんに、スキップして新生児室に行き、2、3日後には退院してすぐ簡単な家事ができた位だった。しかし私みたいな楽勝モンを平均とするのは、他の妊婦さんには気の毒な話なのだ。特に「妊娠中毒症」を併発していたり、産道に傷がいっていたりすると、「座る」ことさえままならないのだ。自分自身立ち上がるにもヒーヒーいう状態で、子供は3時間おきにオッパイを求めて泣く。これでニコニコしていられるハズがない。

3)本人の性格

これは真面目だったり、責任感が強かったりするともうダメだ。「完璧なママ像」目指して、無理をしてしまうのだ。「母乳でなきゃ」「布オムツでなきゃ」「泣かせちゃダメだ」「愛してあげなきゃ」。子供を産んで嬉しいはずが、どんどん禁欲的な状況を自ら作り出してしまう様な性格の人は、「泣いとっても死にゃせぇへん」と思える人よりもノイローゼになる可能性は高い。

4)子供の状況(性格を含む)

特に低体重児に多いらしいのだが、「泣きっぱなし」という赤チャンが本当にいるのだ。これはママさんの抱きかたが悪いとか、おっぱいが足りてない、とかいう以前に、とにかく「寝つきが悪い」泣きっぱなし赤チャンなのだ。私が1ケ月検診の時に会った子供は、実に4時間のうち3時間強は泣いていた。まわりのママ達も心配して、「ひきつけ起こさないかなぁー」なんて思う位に泣くのだ。そのママ曰く、「抱っこしても、置いておいても泣くから、もう抱かないことにしたの」なんて言っている。彼女くらい気楽に構えていれば、ノイローゼも起こらない。それでいいのだ。泣くのが個性の子もいるのだ。

5)まわりの理解(特に夫)

実はこれが一番重要なことなのだ。例えば子供が泣いているとする。これに対して、「泣かすな!」とか「お前の育て方が悪い!」などと言われたらどうだろう。ただでさえ、「どうして、泣くの?」とこっちが聞きたい位なのに。逆に、「赤チャンは僕が抱っこしててあげるから、ゆっくり休んでおいで」なんて言われたら、実際に休まなくっても、気分がずーっと楽になるものなのだ。このあたりを周りにいる大人が察して、フォローしてあげなければいけない。

「夫」というのは二種類に分かれるらしい。「妻に優しい夫」と「子供に優しい夫」なのだが、最低産後2ケ月位は、子供よりも奥さんに優しい夫でいてもらいたいものだ。それだけで、上記の4つまでがあてはまっていても大事には至らない。「子供に優しい夫」というのは曲者だ。奥さんを「子供の母親」としか見られなくなり、どんどん厳しくなっていく。テキトーでいいや、と用意した食事を「こんなもの子供に食わすな」と言ってみたり、公園でこけた傷を見つけて「お前がちゃんと見てないからだ」と責めたりする様になる。これでは奥さんが可哀想だ。 
私は性格からすると、育児ノイローゼになるタイプなのだ。

しかし、私は一度、仕事上で我慢に我慢を重ねた結果、玉砕して周りに大迷惑をかけた経験があるのだ。そのことで「小出しにすることの重要性」を痛感している。

新聞によると「二日未明、夫が就寝中に乳児を抱いて自宅アパートの部屋を抜け出し」とある。

夫は寝ていたのだ。妻が子供を放りなげたくなるほど辛い思いをしていた時に、夫はすやすや寝ていたのだ。妻が家を出た事にも気づいていなかったのだ。妻も夫に声をかけていない。こんな夫婦ってあるだろうか。きっと日頃から、この夫は協力的でなかったと思う。仕事で忙しかったならば、優しい言葉ひとつでもかけられなかったのか。「うつ状態だった」ということがわかっていたのなら、日本の実家に帰してあげることは出来なかったのか。お金で安らぎが買えるなら、借金してでもメイドさんを雇ってあげられなかったのか。

とにかく身につまされる悲しい事件だった。
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