Should be all right

最終アサイメント。グループプロジェクトの内容は3ヶ月前には発表されていた。

それから、毎週の様に週末のミーティング。
香港の人たちは当然のことながら全員ビジネスに忙しい。フリーランスでヘルパーなしの4人の子持ちの私も勿論忙しい。
だからレポートのやり取りは深夜12時を過ぎてから、ということも珍しくない。
そしてそれが朝まで続くこともある。

ミーティングの時間はいつも土曜日午前中にスタート。そしてレポートの編集作業はその直前の30分前まで続く。自宅を出る直前、最新版のレポートを印刷してミーティングに臨むも、現場ではその後更にアップデートされていたファイルがキレイに印刷して並べられていたりする。

ミーティングは常に白熱し、時には目に涙を浮かべんばかりの議論になったこともある。5時間ノンストップ、昼食も食べず、水一滴も飲まず、トイレにも行かず、いやそんな雰囲気ではなく、ただただ気づけば時間が経っていた、そんなミーティングを重ねた。私以外ほぼ全員がManager、Executiveなどの肩書きを持ち、MBAを始めマスター所持は当たり前、マスター2つ以上もゴロゴロ居るという環境。全く違う業界の5人チームで、全員でのコンセンサスを得られないとレポートは進まない。このコンセンサスを得るのに相当のエネルギーを要した。

コンセンサスが得られると、今度は恐ろしいスピードで作業が進む。自分の担当部分は当然、それ以外の部分も自分が書けそうなところにドンドンと自主的に追加が加えられる。そのスピード感と質の高さに深夜一人PC前で唖然とした。ハイレベルなレポートを私一人のためにレベルダウンしてはいけない、でも一朝一夕にすごいものが出てくるわけではない。彼らのレベルと自分のレベルの差。自分自身への嫌悪感に吐気を催し、涙さえも出ない。

そして異常事態発生。

2ヶ月半かかって作り上げたレポート、ほぼ9割出来上がっていたレポートのほとんどを提出1週間前に反故にするという決断を全員で下す。このままではハイマークが取れない、全員がそう思ったからだ。この最後の1週間、私たちメンバー5人はほとんど寝ていない。日中は仕事で忙しい。帰宅後にレポートが集まり始める。信じられないスピードでレポートが完成した。当日には1グループ当たり30分間のプレゼンテーションもこなさねばならない。パワーポイントのファイルを作成し、本番に臨む。

全員が疲労困憊の状態で当日を迎え、無事にプレゼンテーションも終了した。

他チームのプレゼンもすごかった。最終的にコースの成績優秀者の一位(経営コンサルタント氏)と二位(ITマネジャー氏)を抱えるチームは、香港で有名なディスカウントコスメ会社の中国進出に伴う知識管理についてだったのだが(実はこの会社、一度中国進出を試みたが撤退した経緯がある。このチームにはここの社員が居る)、そのプレゼンテーションがものすごいハイレベルなもので、脳味噌叩き割られたような衝撃を受けた。しかも、彼らのインテリジェンスを持ってすれば、この程度のプレゼンなんて簡単さ、と言わんばかりの余裕が感じられたのだが、聞けば事前に2回も通しでプレゼンテーションのリハーサルを行ったというのを聞き、これまた愕然。

結果的には、我がチームとそのチームは同点で(40点満点中35点)、プレゼンテーションは彼らがハイマークであったが、我がチームはレポートのフォーマットがアカデミックであったということで得点を稼いだ。もう1チームは、プレゼン時間が10分超過で激しくポイントを失ってしまった。教授曰く、経営陣へのプレゼンで10分超過というのは、それだけで選択肢から外される理由になる、とのことであった。

私たちの戦いは、やっと終わった。

それから1週間。最後の授業に集まったクラスメートの顔から悲壮感が消えていた。15名全員無事修了。

帰りのミニバスに揺られながら、いつも聞く音楽さえ違ったものに聞こえた。何も知らない他人に「大丈夫だよ」と言われても、その言葉はきっと届かない。

でもね。

自分で何かを獲得したり、高いと思っていた山に登れたり、途中苦しくて投げ出したい衝動にかられながらも踏ん張ったり。その結果見える景色は以前と違う。

明るく元気に「夢はでっかくこう描く」という声を聴きながら、でもそれはきっと若い子達に捧げる言葉なのだろうと思っていた。

ああ、分った。そうだったんだ。

「きっと大丈夫」という言葉は軽くない。自分の中に根拠が生まれた今、その言葉は軽くない。根拠もなく自分なんて信じられない。でも乗り越えた経験は、充分その根拠になる。

信じられる根拠に。

力を出し切って初めて力の抜き方を知る。限界を超えて八分目を知る。

音楽さえ違って聴こえる。

きっと大丈夫」嵐

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